バックナンバー(もっと見る)

2024年春季号 vol.5

今年は3月後半が寒かったせいか、例年より桜の開花が遅くなっておりましたが、全国…

2023年秋季号 第3号

戊辰戦争では、当時の会津藩は鳥羽・伏見の戦いで「朝敵」とみなされ、その後も新政…

ザ・戊辰研マガジン

2020年06月号 vol.32

ザル制度「持続化給付金」

2020年06月04日 10:23 by norippe
2020年06月04日 10:23 by norippe

 私が予想した通り、新型コロナウイルス経済支援策『持続化給付金』の火事場泥棒は現れた。
 この火事場泥棒いわく、「今までいろんな違法ビジネスに手を染めてきたが、これほどラクに500万円が手に入りそうなことはない」
 そう得意そうに笑うのは、ネットワークビジネスや仮想通貨詐欺、闇金まがいの資金調達まで、数々の裏の仕事を手がけてきたという40代男性。
 新型コロナウイルスの流行で打撃を受けた国民への経済支援が急がれるいま、火事場泥棒のごとくそれらの支援策を食い物にする人間が現れ始めている。中小企業や個人事業主を対象に創設された『持続化給付金』を違法に詐取するこの40代男性もそうした人間の一人だ。



 経済産業省が創設した『持続化給付金』。受給資格は、売り上げが前年同月比で50%以上減少している月がある事業者で、中小企業には最大200万円、個人事業主には最大100万円が支給される。政府は、130万件の支給を想定し、2兆3000億円を予算として計上している。
 だが、この40代男性のビジネスが新型コロナウイルスにより大きな打撃を受けたわけではない。当然、前年同月比で売り上げが50%以上減少した月もない。それなのに、最大支給額の100万円や200万円どころか500万円が手に入るとは、どういうわけなのか。この男性のその手口を明かしてみよう。

 持続化給付金の給付額の算定方法はすごく単純。前年同月比でもっとも落ち込んだ月の売り上げに12をかけて、昨年の売上総額から引けばいいのだ。申請には昨年の確定申告書や法人事業概況説明書などの書類の控えを提出しなければならないが、今年の売り上げに関しては自己申告でいい。つまり今年の帳簿上で、ある月の売り上げを前後の月に分散させて前年同月の半分以下にすれば、給付金を受け取れる条件を満たす。

 40代男性の話の内容はこうだ。
 「自分は会社を2社持っているが、どちらも節税目的のペーパーカンパニーなので昨年の売り上げはほぼなかった。そこで、税務署に修正申告書を提出して200万円ほどの売り上げを粉飾した。同時に経費も200万円分付けたので、利益はゼロで法人税もゼロ。この方法でペーパーカンパニー2社+自分の個人名(個人事業主として)で3件、計500万円分の給付金を申請したのだ。税務署への修正申告と合わせても、3件で1時間もあれば申請できる」
 「持続化給付金は経産省が急ぎに急いで新設したザル制度。国税庁とは違い申告内容の裏取りすらされない。そもそも、経産省と、国税庁を管轄する財務省は仲が悪いので、連携も取れていない。リスクを感じることなんてないのだ」
一方でこの男性は、「自分なんて控えめなほうだ」と言い放つ。
 「ネットワークビジネスを手掛けている連中は、節税のためにペーパーカンパニーを3~4社持っていることもザラ。8社分、計1,600万円の申請をした仲間もいます。自分の知り合いだけで、もう200件は申請されている。生活に困っているヤツなんて一人もいませんが、カネくれるっていうなら、そりゃもらうよ」

 これらの犯罪に対応する手立てはないもののか。

 給付金の不正受給は詐欺罪に該当するが、持続化給付金に関して詐欺罪を立証することは難しい。今年の売り上げを低く見せるために計上日を前後させたとしても、詐欺を目的にしたものかどうかを判断することは困難だ。130万件に上る申請書類をくまなく精査することもほぼ不可能。また、税金の過少申告は罪に問われるが、小規模の過大申告は事件化できない。

 5月7日時点で持続化給付金の申請件数は50万件を超えていて、すでに予算の3分の1が消化されたと言われている。そのうち、いったいどれだけが不正申請によるものなのか。国には、簡単に不正申請できてしまう現在の制度を是正するとともに、不正受給者を厳格に取り締まる責任がある。

 また、日本郵政傘下の日本郵便とかんぽ生命保険の社員が新型コロナウイルスの影響を装い、収入が減った個人事業主らを救済する「持続化給付金」を悪用した疑いが浮上し、日本郵政は27日、社内調査を始めたと明らかにした。販売不正を受け営業自粛中のかんぽ生命保険契約で得られたはずの収入減を給付金で補うのは制度の趣旨に反する。日本郵政は不正を確認次第、申請を取り下げさせるか、受給した場合は返還させる。
 調査はインターネットへの書き込みなどが端緒。持続化給付金は、個人事業主の場合、確定申告する「事業所得」が1カ月でも前年の半分以下に減ると、減少分を上限に最大100万円の受給申請が可能。かんぽ生命と、郵便局で保険を取り扱う日本郵便の営業担当社員は、自社の給与所得以外に、保険契約に伴う営業手当を事業所得として受け取り確定申告している。



読者コメント

コメントはまだありません。記者に感想や質問を送ってみましょう。

バックナンバー(もっと見る)

2024年春季号 vol.5

今年は3月後半が寒かったせいか、例年より桜の開花が遅くなっておりましたが、全国…

2023年秋季号 第3号

戊辰戦争では、当時の会津藩は鳥羽・伏見の戦いで「朝敵」とみなされ、その後も新政…