待ちに待ったオリンピックが始まり、手に汗握り、テレビ画面に釘付けの毎日が続く。
勝って嬉し涙もあれば、負けて悔し涙もあり、悲喜交々だ。そんな中、競技に負けても笑顔を絶やさないアスリートがいたことを、テレビ番組「Mr.サンデー」が放送。大きな反響があった。競技に失敗しても笑顔を絶やさない女性アスリート、スケートボードのマージェリンアルダ・ディダル選手である。
何度失敗しても絶やさない笑顔で競技を終える。その笑顔が多くの人から好感を持たれ、その笑顔の写真を、スマホの待ち受け画面にして「いつも笑顔でいられますように」と言う人も現れた。
この笑顔になぜ日本人は心を震わせたのか。
日本の西矢選手(13歳)が金メダル、中山選手(16歳)が銅メダルで表彰台に上がった。その表彰台にこのディダル選手はいない。
ディダル選手はフィリピンのセブ島で生まれて育った22歳。スケートボードに出会ったのは12歳の時である。親は公園で屋台を営み、その屋台で彼女は手伝いをしていた。その公園はスケボー少年が多く集まる場所であった。彼女はそのスケボーを見てやりたいと思ったのだ。しかしお金が無いのでスケボーは買えない。その当時知り合った今のコーチであるダニエル・パーティスタさん達が彼女にボードを貸し与えていた。
そして彼女の才能に気付いた仲間達がスケボーのパーツを寄せ集め、中古のスケートボードを作り上げ彼女にプレゼントしたのだ。
寄せ集めのボードで始まった彼女のライダー人生、才能はみるみる開花し、地元のコンテストで賞金を稼ぐほどになり、当初スケボーに反対していた母親も認めるようになり、そして彼女の稼ぎで家計を賄えるまでになったのだ。
2018年ジャカルタで行われたアジア大会では優勝を果たした。その頃から彼女の笑顔が絶える事はなく、一緒に戦ったライバル選手は、失敗しても笑顔が絶えない彼女を見て、あんなにニコニコ顔で場を盛り上げられる選手はいないと語っている。
ライバルの相手が失敗しても、笑顔で「NEXT ONE!」と声を掛け励ます姿がある。どんな失敗も「NEXT ONE!」への通り道。だからこそ彼女はライバル達の存在をより良い記録に挑む為の仲間なのだと言う。
今回のTOKYO2020オリンピックでも、競技に失敗した選手に駆け寄り「惜しかったね!」「次は行けるよ!」と声をかけ、抱きしめて相手を励ます姿があった。またライバルが自分を超える大技を決めても、我が事のように喜ぶ彼女。迎えた決勝戦では、演技に失敗したが、やり切ったという清々しい表情を見せたディダル選手であった。転んでも笑顔を見せ、両手を高々と上げ「ありがとう!」の言葉を発するのだ。
彼女はかつて取材の中で言った言葉がある。
「スケートボードは人生と同じで、何度失敗しても立ち上がって進み続けるもの、結果がどうあれ私はここにいられることが嬉しいのです」
そう信じて笑い続ける彼女の姿に、最高の舞台で限界に挑めるのが嬉しくて仕方のない彼女の姿に、私達は何か気付くものがあるのではないだろうか。
そもそもオリンピックって何のためにあるのか?
メダルが全てなのか?
最後に、ディダル選手が日本の皆さんに寄せたメッセージがある。
「こんにちは、マージェリン・ディダルです。愛とサポートに"どうもありがとう"とお伝えしたいです。特に日本にオリンピック2020を開催してくれてありがとうございます。スケートボードの試合を開催してくれてありがとうございます。食べ物はすごく美味しいし最高の経験でした。実現してくれた組織委員会、ボランティアの皆さん全てに感謝します。本当にありがとう。そしておめでとう日本、皆さん愛しています。」
食べ物がすごく美味しいと喜んでくれるディダル選手に、こちらこそありがとうと言いたい。近隣ホテルに給食センターを設置し、自国から持ち込んだ食材で弁当を作り選手に届けるといった、福島食材の風評被害を助長するどこかの国とは大違い。
まだ22歳と若いディダル選手、これからもオリンピックを背負って、その笑顔を見せてくれることでしょう。
2024年春季号 vol.5
今年は3月後半が寒かったせいか、例年より桜の開花が遅くなっておりましたが、全国…
読者コメント