1.土方歳三と新選組
コロナ禍のため、1年半待って、映画「燃えよ剣」が公開されました。以下、ネタバレを含みますので、まだ、映画を未見の方は、ご注意ください。
物語は、多摩の百姓育ちの土方歳三が、武士になると志を抱いて京へ上り、新選組を組織し、王城一の武装集団に育てるといった、オーソドックスな流れです。やはり、2時間半の上映時間は短いです。とはいえ、2004年の大河ドラマ「新選組!」で、1年間ドラマ化しても尺が足らず、前後編の続編までできましたが、それでも、物足りなかったですしね。新選組はわずか6年間存続した集団ですが、命がけでエピが満載の物語を残してくれました。
本作の岡田准一さん演じる土方歳三、とにかく強くて、岡田さんの殺陣が見事です。テレビ番組で、岡田さんが竹馬に乗りながら、長縄を飛ぶという場面を見たことがありますが、身体能力がすごいと思った次第です。当然ですが、絶対、筆者にはできません。
創作物語なので、史実はともかくとして、原作は1964年作なので、55年経って新選組も「歴史」になり、近年、研究が進んできました。司馬遼太郎さんは100年では歴史にならない、まだ祖父母の代の話で、子孫の記憶が残ると書かれていましたが、明治維新も150年が経ち、幕末史も5代前の話になり、研究対象になってきました。
京都守護職松平容保が、京へ来た当初は浪士と敵対するのではなく、彼らを公務合体策に取り込もうと、話し合いを試みようとしたり、池田屋事件で大和出身の尊攘派浪士、大沢逸平が風呂場に隠れて、あの激闘を生き延び、一戦が終了した後、ひそかに逃亡したりと、物語の中に新たなエピソードも取り入れられていました。
学生時代に、筆者は初めて小説「燃えよ剣」を読んだときに、土方が亡くなった35歳に自分がなったら、彼のように頼もしい大人になれるのかと思っていました。土方の年をはるかに超えましたが、なかなか彼のようにはいきません。
本ドラマで、病床の沖田総司が今後を憂えて、「どうなるんでしょうねぇ」と言うのを、土方が受けて、「どうなるかではなく、どうするかだ」と言っていましたが、自分で自分の人生を「どうするか」の生き方を実践したいものだと思います。
本作は映画ならではの殺陣や、戦闘場面が見どころですが、近藤・井上・土方・沖田の多摩以来の仲間たちの関係性も見事に描かれていました。時代の流れには逆らえないものの、彼らの強い絆が良い味を出し、見る者の救いとなりました。
さて、「燃えよ剣」ならではの、土方とお雪との恋愛話についてです。お雪は司馬遼太郎氏の全くの創作ですが、京の花街で、もててもてての土方の女性関係が、このお雪一本にしたのは、正解だと思いました。ただ、原作よりはもう少し、現代風な自立した女性像が描かれています。時代劇に恋愛を入れるのは難しいです。明治にならないと、なかなか女性は家から開放されず(というか、自立しようにも仕事がない!)、現代でも、「家」によっては自由恋愛への反対運動が起きますし。
本ドラマで、どうもお雪さんが現代的だと筆者が感じたのが、女性の一人暮らしをしていることです。後家なので、亡くなった旦那の家にそのまま居るという設定なのでしょうが、江戸期に女性の所帯主では賃貸は借りられなかったと聞いたことがあります。
お雪は自分で算段して、大坂、箱館と転戦する土方を追いかけていましたが、そこまで追いかけて来てくれたら、男冥利に尽きるでしょう。
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